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2012年3月6日配信

 部室のドアに鍵をかけようとするあの人に、

 「のと先輩」

 と呼びかける。

 「のと?」

 「さのときこ、の二文字目と三文字目で、のとです」

 「能登かわいいよ能登?」

 「なんですかそれ」

 「なんだか知らないけど、鈴木さんが前に言ってた。ネットで流行ってるんだって」

 のと先輩は部室のドアを押してみて、鍵がかかっているのを確かめてから、廊下を歩き出す。私も後に続く。

 「のと先輩」

 「なに?」

 なにを言おうか迷っていたら、顧問の植島先生が階段を登ってくるのが見えた。

 「ちょっと佐野さん遅いんだけどぉ? 五分前には鍵締めて返してよねぇ」

 「すみません。さようなら」

 「はいさようなら」

 のと先輩は鍵を植島先生に渡す。植島先生は戸締まりを確かめるために部室に、のと先輩と私は階段に向かう。

 「のと先輩」

 「なに?」

 やっぱり、なにを言えばいいのかわからない。勢いで「好きです」とか言ってしまいそうになる。でもそれは違う。

 「のと先輩」

 のと先輩は黙ってうなずく。

おわり